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ようやく理想のお嫁さんを見つけることができた。そして三人の孫娘ができて、その三人に毎日囲まれて忙しく幸せな日々を送っている。
初めての女の子は二歳からピアノを習わせ、英語に通わせ私立の小学校に入れたくて、横浜の有名な塾にせっせと通わせた。ところが、いざ入学試験になったら、両親がろうあ者であるという理由で、お爺ちゃんお婆ちゃんが同居していても、緊急の場合には困るということで、入学を断られて悔しい思いをした。憲法では「教育の自由」をうたっているが、教育の現場では今もなお、差別が行われているのだ。皆が手を携えて差別や偏見に立ち向かってゆかねばならないと思う。
いま三人の孫は小学校六年と一年生、幼稚園の年中である。「この子たちがお嫁に行くころまで生きていられるかねえ」と、主人と語り合っている。
主人は七十八歳、私は七十三歳、光二は四十三歳になる。私の母は八十五歳で亡くなったが、「辛抱する木に花が咲く」とよくいっていた。親孝行とは、親に金とか物をあげることではない。親に心配をかけないことだと教えてくれた。
私の一番好きな歌、「幸せは歩いてこない、だから、歩いて行くんだよ」。私はこの歌の通り、いつも先頭に立って光二の面倒を見、耳の代わりとなって頑張ってきた。光二も私の期待に応えて、よく辛抱し頑張ってくれた。今は理容店「ヘアーサロンよしの」のオーナーとして、立派にやってくれている。何も言うことはない生活に入ったと感謝している。

 

 

 

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